2024年1月10日 11:20
スター誕生の瞬間を目撃したような高揚感! 山崎育三郎が豊かな表現力で魅せるミュージカル『トッツィー』
赤い眼鏡に、ウェーブのかかったボブヘア。高いヒールで道を切り開く山崎育三郎の勇姿に思わず拍手を送りたくなったのも、彼の演じるマイケル・ドーシー&ドロシー・マイケルズが、めげない人だったからだろう。
演技への情熱は人一倍。だけど、完璧主義な性格のせいで、すっかり扱いづらい俳優と見なされていたマイケル・ドーシーには、まるで仕事が来ない。いつの世も仕事に求められるのは、実力よりも、適度な柔軟性とコミュニケーション能力なのだ。
ところが、仕事ほしさに“ドロシー・マイケルズ”と名乗り、女性として参加したオーディションで敏腕プロデューサーのリタ(キムラ緑子)に気に入られたマイケルは合格。脇役だったはずが、主役としてプレビュー公演の初日に立つこととなる。
そんなドタバタ劇に軽快な味付けをもたらしているのが、デヴィッド・ヤズベックの音楽とデニス・ジョーンズの振付だ。
開演の合図として、音楽監督・指揮の塩田明弘が客席に向かって挨拶。観客を煽るように手拍子を求める。弾けるサウンドに、高まるクラップ。この作品は、決してかしこまって観る必要はない。思い思いに楽しんでくれればそれでいい。作品と観客の間で、秘密のメッセージのような“約束”が最初に交わされる。