スター誕生の瞬間を目撃したような高揚感！ 山崎育三郎が豊かな表現力で魅せるミュージカル『トッツィー』

マイケルのときはプライドの高さがにじみ出た強気な顔つき。それが、ドロシーになると困ったような微笑みがいつも顔に張り付いている。さらに、ドロシーとして振る舞っているときも、他の人から目線が向けられているときと誰も見ていないときではコロコロと表情が変わっていて、その器用さが本作の喜劇色をより濃いものとしていた。



ヒロイン役のジュリーを演じる愛希れいかは、媚びない演技が印象的。どんな理不尽にも負けず信念を貫くジュリーのサバサバした魅力が、愛希れいかの毅然とした佇まいで倍増していた。サンディ役の昆夏美はヒステリックなキャラクターの中に愛嬌を散りばめ笑いどころをつくり、ジェフ役の金井勇太は全体的にテンションの高い演技が多い中、オフビートなテンポで緩急をつける。




さらに、マックス役の岡田亮輔は文字通り体を張った演技で笑いを誘う。複数回通う観客にとっては、Wキャストのおばたのお兄さんとのキャラクターの違いも注目のポイントだろう。ロン役のエハラマサヒロの安定感、スタン役の羽場裕一の色気の中にある軽妙さも良く、それぞれ的確な配役。そして、リタ役のキムラ緑子がパワフルな演技で作品にブーストをかける。