くらし情報『父・松本白鸚も演じた『花の御所始末』に幸四郎が挑む 『三月大歌舞伎』初日レポート』

2023年3月6日 11:40

父・松本白鸚も演じた『花の御所始末』に幸四郎が挑む 『三月大歌舞伎』初日レポート

と筋書で語っていた。戦乱の非常さ、虚しさ、人々の孤独にスポットを当て再編成され、現代にも通じる普遍的な物語となった本作を、秘法による幻想と現実が美しく混ざり合う、妖しく艶めかしい一幕としてお届けする。

続いては、上方和事の名作『廓文章 吉田屋(くるわぶんしょう よしだや)』。大坂新町の吉田屋へやって来たのは、編笠をかぶり紙衣姿に零落した藤屋の若旦那伊左衛門(片岡愛之助)。放蕩三昧で勘当されながらも、恋する遊女夕霧に会いたい一心でやってきた伊左衛門を、吉田屋の亭主喜左衛門(中村鴈治郎)と女房おきさ(上村吉弥)は座敷に迎え入れる。そわそわと待ちわびる伊左衛門のもとへ、ようやく夕霧(坂東玉三郎)が姿を現すが、二人は痴話喧嘩を始める始末……。

舞台に、玉三郎演じる夕霧が登場するとパッと華やぎ、ひときわ舞台が明るくなったよう。艶やかさと儚さをたたえた夕霧の美しさに、観客も伊左衛門と共にその登場を待ちわびていたことが分かる拍手に包まれた。
本作を自身の家(松嶋屋)の大切な狂言と語る愛之助は、まさに「和事」の主人公の代表ともいえる伊左衛門を、みすぼらしい身なりでも失われない品格と可笑しみたっぷりに勤めあげる。

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