2022年5月16日 18:00
辻村深月×成井豊×田野優花『かがみの孤城』再演に向けた三者三様の想い
劇世界に没入しすぎず、客観視もしながら作品のメッセージをシンプルに、ストレートに伝える。そのバランスを取るのがすごく難しいんですけど……なぜか「私ならできる」と感じてもいて。
──その静かな自信はどこから来たんでしょうね? 脚本を信じて、のびのびと主人公を演じられていることの源泉に何があるのかな、と。
田野(しばらく考えて)私がのびのび稽古できているのは、『かがみの孤城』という作品と、周りにいるキャスト・スタッフの皆さんを信頼しているからなんですよね。それに、自分が経験した“いじめ”を無駄だと感じていないことも大きいかもしれません。いじめに遭ったからといって、私はいわゆる「かわいそうな子」ではなかったんですよ。
──自分のことを「かわいそう」と思ってはいなかった?
田野はい。いじめの原因がわからず本当にツラかったですけど……「こんな目に遭ってしまう私かわいそう」と、悲劇のヒロインのように自分を受け止めることはなかったですね。
そう感じられたのは、救いの手を差し伸べてくれる家族や友人が周りにいたから。そういう人たちと一緒にいて楽しかったですし、周りの人間や自分の度胸を信頼する力に繋がったと思います。