2021年4月26日 12:00
稲垣吾郎が苦悩する死刑執行人を好演『サンソン ─ルイ16世の首を刎ねた男─』ゲネプロレポート
による父親殺し事件が起こって……。
国の裁きの代行者として“ムッシュー・ド・パリ”と呼ばれ、誇りを胸に職務をまっとうしてきたシャルル。熱心なカトリック教徒にして死刑廃止論者でもあった彼は、罪を裁く己の職務と処刑が持つ残虐性の間で引き裂かれ、苦しんでいく──。稲垣はこの葛藤を、冷静に努めた演技の中ににじませる。ヒステリックに激情をほとばしらせた『No.9』のベートーヴェンとは正反対の、新たな一面に注目だ。
国民に向き合わずパリを脱出して逮捕され、王の権威を失墜させたルイ16世だが、一幕では身分によって異なる処刑法に心を痛める、優しく聡明なキャラクターとして描かれた。演じる橋之助は、気品と貫禄に満ちた立ち居振る舞いとセリフ回しで人物を造形。前段となるこのエピソードがあるからこそ、革命の進行によって袂を分かったシャルルと王の悲劇が際立つ。
シャルルの法律観に大きな影響を与える登場人物には、実力派の若手が揃い踏みだ。父親殺しのジャンに牧島、ジャンの恋人エレーヌに清水葉月、断頭台ギロチン開発の道に進むトビアスに橋本淳、粛清を断行した政治家ロベスピエールの右腕と称される革命家サンージュストに藤原季節、若き日のナポレオンに落合モトキがキャスティング。