松田正隆が19年ぶりに青年座に書いた『東京ストーリー』が開幕
日々、私たちの生活の中で生まれては消える“おしゃべり”やそれに伴なう“身ぶり”は、果てしのない出来事の構成要素。それらは、始まりがあり終わりがあるような一つの物語として統合されるストーリーではない。上演空間に身をおくようにして感じとることのできる、いくつもの“はなしの場”の感触を経験すること。これからの演劇の可能性はそこ(出来事としての空間)にあると思っています」とも。
また今回、演出を担当する青年座の金澤菜乃英は「青年座で久々にお目見えする松田正隆氏の新作は、東京で生活する人々の縮図であり、家庭や職場で営まれる日常の連続です。その人がそこに存在することを考える日々。新しい挑戦に思える一方、芝居をすることの原点に帰る機会をいただけたと感じています」。
近年は「マレビトの会」でのプロジェクト『長崎を上演する』『福島を上演する』などで、既成の価値観にとらわれない演劇を追求してきた松田正隆と、青年座最若手で新進気鋭の金澤菜乃英。
ふたりがどんな空間を浮かび上がらせるのか、新たな“東京物語”を楽しみにしたい。
文:伊藤由紀子