古典歌舞伎の名作から期待高まる新作歌舞伎まで。熱気あふれる「八月納涼歌舞伎」華やかに開幕
幕が開くと、江戸は京橋の桶屋。お兼(坂東新悟)と家主平作(坂東彌十郎)が、仕事もせずに出かけてしまった弥六(巳之助)を嘆いている。しかし酒に酔って帰ってきた弥六が聞く耳を持たないため、お兼は実家へと帰ってしまう始末。やがて日が暮れ、弥六のもとに現れたのは美しい芸者の幽霊、染次(児太郎)。女房にしてほしいと申し出る染次と戸惑いつつもまんざらでもない弥六のコミカルなやりとりに、観客からは自然と笑みがこぼれる。やがて染次と夫婦同然の仲となり昼夜逆転の生活を送る弥六は、平作から店賃の滞りがあれば追い出すと言われてしまう。ふたりが店賃を稼ぐ算段として考え付いたのは、恨みを晴らしたい人に幽霊を貸し出す「ゆうれい貸家」。染次は、屑屋の幽霊又蔵(勘九郎)をはじめ、爺の幽霊友八(市川寿猿)、娘の幽霊お千代(中村鶴松)を呼び寄せ、大いに商いは繁盛するが……。
個性豊かな幽霊たちと弥六の軽快なやりとりに笑いながらも、人間の本性をも感じさせる哀愁溢れる人情喜劇に、客席からは大きな拍手が送られた。続いては、『鵜の殿様(うのとのさま)』。歌舞伎舞踊としては本年2月に博多座「二月花形歌舞伎」にて初演され、好評を博しての再演となる。