古典歌舞伎の名作から期待高まる新作歌舞伎まで。熱気あふれる「八月納涼歌舞伎」華やかに開幕
が結納品を持参し、後家お常(中村扇雀)が迎える。しかし店の手代忠七(中村七之助)と恋仲のお熊は、縁談を受け入れることができない。白子屋に出入りする髪結の新三(中村勘九郎)はその事情を盗み聞き、慣れた手つきで髪を撫でつけながら、忠七に駆け落ちを唆す。その晩、お熊を連れ出した忠七は永代橋のたもとで豹変した新三に蹴飛ばされ、額に傷をつけられてしまう。
手練れた髪結姿から一変し、忠七を罵る新三の「傘づくし」の名セリフ。悪党の本性をあらわにしながらもどこか色気のある新三の姿に、客席は一気に引き込まれた。
新三が颯爽と立ち去ったあと、身投げしようとする忠七を引き留めたのは侠客の弥太五郎源七(松本幸四郎)。お熊を取り返すため新三との交渉を引き受ける。
悠然とやってきた親分の源七を新三と下剃勝奴(坂東巳之助)はうやうやしく迎える。源七は新三に啖呵を切ったものの追い返されしまい、ふたりの間には遺恨が残る。代わって交渉を引き受けたのは長屋の家主・長兵衛(坂東彌十郎)で……。老獪で言葉巧みな長兵衛に新三が次第にやり込められる、打って変わったおかしみある展開に、客席の雰囲気もがらりと変化。さらに、小気味良いやり取りの中では、「それはうちの親父だよ」