2024年5月9日 18:00
『デ・キリコ展』東京都美術館で開幕 形而上絵画から古典主義的作品まで、世界各地から集められた約100点が一堂に
とは、哲学において、形のないもの、形を超えたもの、つまり思考や精神、概念などを示す言葉だ。
1910年のある日、見慣れたフィレンツェのサンタ・クローチェ広場を見たとき、まるで初めて見る景色であるかのような感覚に襲われたデ・キリコは、この「啓示」をきっかけに、歪んだ遠近法用いたり、脈絡のないモチーフを配置した広場や室内、マヌカン(マネキン)などを描き始める。わかりやすいモチーフや構図を使っていながらも、どこか現実離れした不穏で神秘的な雰囲気を醸し出すこれらの作品を、後に自ら「形而上絵画」と名付けたのだ。
アーケードや長く伸びる影、雲ひとつないのに不穏な青空などを描いたイタリア広場のシリーズをデ・キリコは数多く描いている。この謎めいた作品群に、詩人で小説家、評論家のギヨーム・アポリネールや若きシュルレアリストたちはたちまち魅了されていった。
《バラ色の塔のあるイタリア広場》1934年頃トレント・エ・ロヴェレート近現代美術館蔵(L.F.コレクションより長期貸与)(C) Archivio Fotografico e Mediateca Mart(C) Giorgio de Chirico, by SIAE 2024
《イタリア広場(詩人の記念碑)