2023年11月15日 18:30
【レポート】人の世を平らかにするのは慈愛か、力か。 「吉例顔見世大歌舞伎」昼の部『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』
古代インドの神話的叙事詩「マハーバーラタ」を題材に、『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』として歌舞伎座で上演されたのが2017年。初演から6年の時を経て、さらに洗練、熟成されて待望の再演となった。
舞台は古代インドの神々の、まさに神々しい目覚めから始まる。戦争を繰り返す人間たちを嘆き、世界を終わらせてしまおうと語り合っている。神々のうち太陽神は「慈愛で世を救おう」とし、帝釈天(たいしゃくてん/坂東彦三郎)は「力で世を支配しよう」と提案する。那羅延天(ならえんてん/尾上菊五郎)は、太陽神(坂東彌十郎)と帝釈天がそれぞれ子供を世に送り出し、どちらが世の中を収められるか、あるいは収められないかを試そうという。
そのふたりの子というのが迦楼奈(かるな/尾上菊之助)と阿龍樹雷(あるじゅら/中村隼人)だ。汲手姫(くんてぃひめ/中村米吉)という同じ母から生まれたが、迦楼奈は慈愛で、阿龍樹雷は武力で人間の世に立ち向かっていく。
汲手姫にガンジス河に捨てられた迦楼奈は、優しい父母に拾われ育てられ、その天性の弓の才をもって人間界を救おうと都へと旅立つ。しかし次第に阿龍樹雷をはじめとする血を分けた五人の王子たち ― 百合守良王子(くりしゅなおうじ/坂東亀蔵)