テリー・ライリーが京都・清水寺の舞台で演奏を奉納 満月の下、約50名の演奏家が奏でたミニマルミュージックの祝祭をレポート
そして、テリーが左手を挙げて合図を送ると、演奏家たちの奏でる音が力強く高揚する。観音菩薩の力を信じて一心に唱える念仏にも通じる多幸感を放ちながら、境内に心地良い音が響き渡る。
『In C-60th Birthday Full Moon Celebration at Kyoto Kiyomizu-dera Temple, July 21, 2024~「In C」誕生60年を祝う奉納演奏 ~』(Photo:三浦麻旅子)
◼︎「満月」も祝祭に参列
時が進むにつれ、生き物のように次々と表情を変えていく「In C」。美しい高揚の狭間、音羽山の自然の中に生息する夜蝉の声、パイプ椅子のきしむ音、観客が煽ぐ扇子の擦れる音など、本来の「In C」には存在しないはずのさまざまな「音」も、繰り返されていくフレーズに加わる。それは、見えるもの/聞こえないものも自在に見聞きして救いの手を差し伸べる観音菩薩の導きのように、見えないはずの音が「見える」ような不思議な体験だった。
最後の高揚が鳴り響いた後、ふわっと涼やかな夜風が吹き込み、濃密で美しい時間が終わりを告げる。割れんばかりの拍手が鳴り響く中、テリー・ライリーが笑顔でつぶやく。