2021年5月29日 07:00
市川猿之助、六月大歌舞伎で『日蓮』を上演 「心の向き合い方を見つけてもらえたら」
でも今回描くのは青年時代、蓮長と名乗っていた時代にスポットを当てました」と猿之助は語る。
蓮長は天台宗の開祖である最澄の教えに感銘を受け、比叡山で修行をする。今回はその修行時代を軸に描く。
「一隅を照らす、ひとつのことを一所懸命にやれば千を照らすことになるという最澄の教えを、おそらく一番強く受け継いだのが蓮長だと思うんです。比叡山にこもり長年修行をしていましたが、疫病や貧困、戦乱に苦しめられている人々を目の当たりにし、恩を仇で返すように見えても蓮長はあえて下山したんですね。“死んでから浄土へ行くのでは遅い、苦しんでいる人々をこの世で救わないでどうするのだ”と」
『日蓮』日蓮=市川猿之助撮影:渞忠之
猿之助は信仰の力と歌舞伎が重なるとも言う。
「まさに今、この世は大変な状況になっています。もしかしたら思い詰めて明日死のうと思っている人がいるかもしれない。
でもたまたま芝居を観て、なぜかわからないけれどもう一日だけ生きてみようと。そう思ってもらえたらうれしい。それが芝居の力です。また日蓮は多くの宗派の理論を学び、その上で、それではだめだと否定している。頭から否定しているわけではない。ここにも芝居を作る人間としてシンパシーを感じますね。