2023年8月17日 13:00
人気声優たちによる朗読劇の魅力が詰まった、『胡蝶ノ、ユメ』開幕
原発事故の際に福島にいたことを理由に、クラスのリーダー的存在の凌たちから心ない言葉をかけられる辰朗。舞台装置は突然スモークを吐き出し、爆発した原子炉建屋のイメージへと変貌する。
中澤まさともの演技は、ティーンエイジャーらしい瑞々しさにあふれ、同じような境遇を強いられた数多の少年少女たちの人生を思い、心が痛む。青山なぎさ演じるちとせが、無邪気ながらどこか危険な香りのする魅力を振り撒くほどに、辰朗との十代の恋の切なさが、より鮮やかになっていく。やがて夏祭りが近づき、一緒に行こうと約束をする二人。が、直前になってちとせから「行けなくなった」と断られ、ショックを受ける辰朗。まさにその翌日、島では、ある「コト」が起こる──。そして9年後の2020年は、誰もが生々しく思い出すパンデミックの渦中。抑制の効いた中澤の声が、時の流れを実感させる。
そんな辰朗のもとに、ルポライターの東雲が取材にやってくるが、彼はあの島で何が起こったかを知っている様子。
観客は次第に、あの島の日々が、ただ甘酸っぱいだけの思い出ではないことに気付かされていく。
中澤、青山との絶妙な掛け合いを見せるとともに、一人で何役をも演じ切った広瀬裕也、竹内栄治の演技も、声優ならではの圧巻の表現力。