主人公の“内なる風景”を描く。衝撃作『ミッドサマー』監督が語る
「現代はどこにいても、いつでも誰とでもつながることができるけど、そのことが僕たちを貧しくしてるんじゃないか、と思うことがある」とアスター監督はいう。「だから、ダニーがホルガでロマンティックな想いをするとしたら、それはネットから切り離れた環境に置かれて、ネットのコミュニケーションから解放されたことで実現しているのかもしれません。この映画はダニーの孤独について描いた映画だと思うし、『ヘレディタリー/継承』の登場人物たちも、同じく全員が血でつながっていて、家族の中にいるにも関わらず、心のどこかで何らかの孤独や疎外感を感じているんです」
そこでアスター監督はプロダクションデザイナーと入念に調査を行い、世界の様々な祝祭や慣習、神話などを組み合わせてホルガの祝祭をつくりだした。「この映画で描かれる祝祭は主にアメリカ社会について僕が感じていることを反映させています。ホルガは様々な要素が合体し、混ざり合っています。あの場所を一種の理想郷だと考えることもできるでしょうし“あんな風になれたらいいのに”と憧れる存在として捉えることもできます」
しかし、太陽の光が降り注ぐホルガは良い面ばかりではない。人々に囲まれ、笑顔で迎え入れられたはずなのにダニーたちの関係は少しずつこじれ、孤独は大きくなっていく。