主人公の“内なる風景”を描く。衝撃作『ミッドサマー』監督が語る
「ダニー以外のアメリカ人たちはみな自己中心的でキャリア至上主義で、個人主義者で、お互いに対して忠誠心がまったくない相手を搾取しようとするキャラクターとして描かれていますが、それはこの映画がダニーの視点から描かれているからなんです。彼女の主観が観客の視点になるので、ダニーの求めているものをアメリカ人たちは何も与えてはくれないけど、ホルガの人たちは与えてくれると思えてしまう。だから映画を観てくれる人には“この映画はあくまでダニーの視点から見た話なんだ”ということを意識して観てもらいたいですし、映画を観ながら葛藤し、格闘してもらたいと思っています」
監督が本作を客観的な視点ではなく、主人公の“主観”を通じて描いたのには理由がある。「僕が映画で描きたいのは、映画で描かれる外側の世界と、登場人物の内側の世界が完全にマッチすることなんです。例えば、別れを経験したとします。客観的に見たら、別れは別れに過ぎないわけだから、友達は“まぁ、よくあることだから立ち直れよ!”というかもしれません。でも別れた本人にとっては世界が終わる、自分が死んでしまう、終末が来てしまったかのような気持ちなわけです。もちろん時が経てば、そんな感情も乗り越えられるんだろうけど、僕はその人がまさにその瞬間に感じる“当事者の感情の大きさ”を映画で表現したいと思っています」