森田剛主演『劇場版 アナウンサーたちの戦争』フェイクニュースもあたり前。ラジオの声は兵器だった……【おとなの映画ガイド】
25人いた同期のなかでも、天才とよばれた才能で、以降、プロ野球の初放送、小説の朗読などを名調子で語り、人気は全国にひろがった。最も話題になったのは、名横綱双葉山が70連勝を前に敗れた一番のアナウンスだ。
天才肌ではあるが、昼間からお酒を飲み、アナウンサー室のソファーで高いびきをかくという、バンカラな豪傑タイプ。やるときはやって、キメてみせるので、皆からの信頼は厚い。
一方、後輩の館野守男は、まだ20代。「国家の宣伝者」を自認している真面目な熱血漢だ。
ふたりは、戦争が始まると、日本軍の戦況を伝える番組を担当。力強い声と言葉で勝利のニュースを電波に乗せ、番組も大人気となる。
この映画は、そんな彼らを中心に、アナウンサーという職業に誇りと夢を持っていた当時の関係者たちが、どのように戦争に翻弄され、加担していったか、その秘話といっていいエピソードを、後に和田の妻となる女性アナウンサーの草分け・和田実枝子(橋本愛)の語りで綴っていく。
もちろん、それはきれいごとではない。戦争が進むにつれ、国民の士気高揚のため、ラジオ放送は戦果ばかり大げさに語り、都合の悪いことは隠蔽するようになっていく。