森田剛主演『劇場版 アナウンサーたちの戦争』フェイクニュースもあたり前。ラジオの声は兵器だった……【おとなの映画ガイド】
それも、ラジオを武器とした「電波戦」のひとつ。さらに、場合によってはフェイクニュースを流し、敵を混乱させるという謀略作戦も使われた。アジアへの戦線拡大に呼応して、放送局は次々と開設された。占領地の日本化を目的としたプロパガンダがその役割だ。
和田の先輩・米良忠麿アナ(安田顕)、今福祝アナ(浜野謙太)、長笠原栄風アナ(渋川清彦)など重要なアナウンサーたちがアジア各地につぎつぎと赴任していった。館野もまた、3万人が犠牲となったインパール作戦に派遣され、“地獄”をみる。
「虫眼鏡で調べて望遠鏡で喋る」、ていねいな取材が和田の信条だった。学徒出陣がきまった母校早稲田の野球部員たちを取材。主将の朝倉(『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』でも特攻隊員を熱演した水上恒司!)をはじめ、部員たちの心の内を知り、苦悩する。
1943年10月、明治神宮外苑競技場(後の国立競技場)で開催された出陣学徒壮行会、ラジオ実況をまかされた和田は……。
毎年、この季節になると、戦争のことが語られるが、ラジオと戦争をテーマにしたドラマは、これまで観たことがなかった。
夢の機械も悪魔の拡声機になる──、メディアからの痛切な自己批判である。