師走を彩る豪華ラインナップで歌舞伎の多彩な魅力を。歌舞伎座12月公演「十二月大歌舞伎」開幕
第二部『加賀鳶』前左より)女按摩お兼:中村雀右衛門、竹垣道玄:尾上松緑、
奥左より)番頭佐五兵衛:市村橘太郎、伊勢屋与兵衛:河原崎権十郎©松竹
続いては、長唄舞踊の名作『鷺娘(さぎむすめ)』。幕が開くと、しんしんと雪の降る水辺に、綿帽子に白無垢姿の娘がひとり佇んでいる。傘を差したこの娘は、人間との道ならぬ恋に悩む鷺の精(中村七之助)。恋に思い悩む様子を踊りで見せていくが、ところどころで鷺の精であることを想起させる。
第二部『鷺娘』鷺の精:中村七之助©松竹
衣裳が引き抜かれ、艶やかな町娘の姿となると、客席からは驚きとがらっと変わった雰囲気への期待感に包まれる。曲調も変わり、恋しい男と結ばれた頃の様子を踊ると、今度は男心のつれなさを訴えていく。美しい娘が踊る女心にうっとりしていると、舞台は降りしきる雪の中へ。恋の妄執が甦り、ついに鷺の精の本性を顕していく。幻想的な美しさの中で激しく凄まじく踊る幕切れに、客席には止まらない拍手が響き渡った。
第二部『鷺娘』鷺の精:中村七之助©松竹
まるで花の香りが漂うような艶やかな踊り『舞鶴雪月花』と玉三郎、團子の『天守物語』
第三部は、季節の移ろいをコミカルに描いた変化舞踊『舞鶴雪月花(ぶかくせつげっか)