師走を彩る豪華ラインナップで歌舞伎の多彩な魅力を。歌舞伎座12月公演「十二月大歌舞伎」開幕
第二部『加賀鳶』左より)御守殿門次:吉之丞、数珠玉房吉:精四郎、磐石石松:坂東亀蔵、虎屋竹五郎:種之助、魁勇次:彦三郎、昼ッ子尾之吉:左近、春木町巳之助:獅童©松竹
血気に逸る加賀鳶の若い者たちを、頭分の梅吉(尾上松緑)が江戸の町衆の憧れであった鳶頭の気風の良さを見せながら留めに入る。ところ変わって、日の暮れた御茶の水の土手際では按摩の道玄(尾上松緑)が通りがかりの百姓を手に掛け懐からお金を盗んで立ち去るが、落としていった煙草入れを松蔵が拾い、この後の物語に大きく関わっていく。
第二部『加賀鳶』左より)竹垣道玄:尾上松緑、日蔭町松蔵:中村勘九郎©松竹
続く場面では、姪の奉公先へ道玄と内縁の妻お兼(中村雀右衛門)が強請りに行く。道玄のふてぶてしさと、お兼の小悪党ぶりに思わずハラハラしながら強請りの現場を見守る。ようやく道玄たちがお金を手に入れたところへ松蔵が現れ事態は一変。ここでも黙阿弥らしい七五調の名台詞での道玄と松蔵のやり取りが聞きどころとなる。いよいよ、道玄とお兼の悪事が露見すると、可笑しみ溢れる立廻りに客席からは笑いが漏れ、最後はすっきりと晴れがかった結末と、どこか憎めない道玄に大きな拍手が送られた。