師走を彩る豪華ラインナップで歌舞伎の多彩な魅力を。歌舞伎座12月公演「十二月大歌舞伎」開幕
たちの姿が……。狼と山羊との息を呑む、大迫力の立廻りは圧巻で手に汗握る展開が続き……。幕切れでは、がぶとめいの誰も邪魔することのできない強い友情に、客席は温かい雰囲気に包まれながら、手拍子で一体となっておおいに盛り上がった。
客席には粋な江戸の風が名作者・河竹黙阿弥の傑作
第二部は、『加賀鳶(かがとび)』で幕開き。歌舞伎の名作者・河竹黙阿弥による江戸の粋が巧みに織り込まれた世話物の傑作だ。今回は見応えある「木戸前」からの上演。
本郷界隈では先日、加賀藩お抱えの鳶と旗本配下の定火消の間で大喧嘩が起こった。今日も日陰町の松蔵(中村勘九郎)をはじめとする加賀鳶たちが勢揃い。
歌舞伎座の花道に俳優が並ぶ姿は壮観だ。ずらっと花道に並び、黙阿弥らしい七五調のツラネの台詞は圧巻で、客席には一気に粋な江戸の風が流れ込む。
血気に逸る加賀鳶の若い者たちを、頭分の梅吉(尾上松緑)が江戸の町衆の憧れであった鳶頭の気風の良さを見せながら留めに入る。ところ変わって、日の暮れた御茶の水の土手際では按摩の道玄(尾上松緑)が通りがかりの百姓を手に掛け懐からお金を盗んで立ち去るが、落としていった煙草入れを松蔵が拾い、この後の物語に大きく関わっていく。