2021年11月15日 12:00
タイムスリップしたような古き良き薫りが味わえる ミュージカル『マイ・フェア・レディ』ゲネプロレポート
イギリスの階級社会を皮肉ったところのある原作戯曲(バーナード・ショー『ピグマリオン』)とは、結末が違うこともあって元々味わいの異なるミュージカル版だが、日本で、しかも今上演されるとあって、見どころは物語よりも音楽やステージング、何よりキャストのパフォーマンス。生のオーケストラや大がかりなセットがクラシカルな雰囲気を盛り上げる演出には、“ミュージカルの殿堂”たる帝国劇場がやはり良く似合い、タイムスリップしたような古き良き薫りが味わえる。
朝夏と別所の生き生きとした演技が、瑞々しいラブストーリーとしても、イライザとヒギンズそれぞれの成長物語としても楽しめる舞台を生んでいた。また、浦井健治や平方元基らが演じたことで若手ミュージカル俳優の登龍門的な役となった、フレディに初めて挑んだ寺西も好演。シルクハットを爽やかに被りこなし、イライザへの一途な想いを楽しそうに表現して魅力的だった。
それにしても、本作と言いシアタークリエで公演中の『グリース』と言い、どちらも映画版が広く知られる作品だが、東宝はなんと映画化に先駆けて翻訳上演を実現している。また間もなく大阪公演が始まる『オリバー!』も、日本初上陸は東宝が1968年に招聘したブロードウェイ・キャスト版であり、その慧眼と行動力には驚かされるばかり。