京極夏彦「歌えばいいんだとわかりました」小西遼生主演ミュージカル『魍魎の匣』15日まで
これを作・演出の板垣が音楽の力も借りつつ的確に整理。謎めく怪奇的要素で観る者を幻惑させ、ラスト、中禅寺秋彦の“憑物落とし”=推理で論理的に謎が明かされるカタルシスまで、一気呵成に物語を描き切る。少ない小道具で次々と場面展開していくさまは小気味よいし、檻のようにも原稿用紙のようにも見える白い格子柄のセットにポイントとなる台詞を文字として映し出すことで、京極夏彦独特の言葉遣いや、重要なキーワードを観客の脳裏に焼き付ける手法も活きている。
何より、時に時間を飛び越え、時に説明を説明臭く感じさせなくする音楽の力が大きい。時間軸を行き来し事件の謎解きをするミステリとミュージカルというジャンルの相性の良さも改めて感じた。
中禅寺秋彦役:小西遼生
古今東西、数あるミステリの探偵役の中でも人気の高い京極堂に扮する小西遼生は、センセーショナルでスピーディに展開する物語世界の中で、ひとり落ち着いた喋り口でひときわ目立つ存在感。着物姿も似合い、この人の持つ少し暗い色気と相まって、ビジュアル的にも京極堂にぴったり。もちろん数々の大作ミュージカルでメインキャストを演じてきている経験に裏打ちされたその歌声からも、京極堂のカリスマ性が伝わってくる。