時代に生きた芸術家たちの魂の声に心震わされる ミュージカル『ファンレター』上演中
登場人物たちの熱き掛け合い、それぞれの思惑が情感豊かな音楽に乗って歌われるが、芸術に命を燃やす人間の生に焦点を当てた栗山演出は、ミュージカルというよりも深淵な心理劇を覗く趣きだ。
誠実に文学の道を目指しながらもヒカルという野心を内包する、そんなセフンの混乱を、海宝がひたすら純粋に、実直に表現し、波打つ感情をそのまま歌に乗せて観客をも戸惑いの渦に引き入れる。徐々に意志を強く示してセフンを振り回し、ヘジンも操っていくヒカルの変化がとてつもなく魅惑的で、木下のしなやかな動きと美声、ファム・ファタルの微笑みに魅入られずにはいられない。
そして猫背のボサボサ頭で現れた浦井ヘジンの、世捨て人のような天才作家の風貌に漂う、愛しさと哀切。ヒカルに固執する弱さを全身に滲ませ、諦観のつぶやきから血を吐くような叫びまで、泥臭く人間の業を曝け出すさまに浦井の新境地を見たように感じた。
セフンに“ヒカルの真相”を語るように仕掛ける自信家の詩人・小説家イ・ユン(木内健人)を始め、新聞社学芸部長イ・テジュン(斎藤准一郎)、詩人キム・スナム(常川藍里)、評論家キム・ファンテ(畑中竜也)ら「七人会」