さまざまな制約で過去最難の窮地を作り出す! 新作『トラップ』に見る“シャマラン流”
しかし、このライブ会場そのものが“トラップ=罠”で、すべての入り口が塞がれ、その周囲には大量の警官隊が配備される。会場内のいたるところに監視カメラが設置され、スタッフ通路はすべてセキュリティロック済み。
大きな会場ではあるが完全な閉鎖空間。外に出ても幾重にも警官が包囲している状態。つまり、逃げ場はない。さらにクーパーは、娘に自分が切り裂き魔であることを知られたくないので、娘と一緒に“父として”このアリーナから脱出しなければならない。しかし、ライブは進行中で娘はステージに夢中だ。
空間の制約、行動の制約、素性を明かせない制約……シャマランは本作で過去最難の状況を自ら作り上げてしまった。
そしてこの制約を単に突破するのではなく、これまでの作品同様、“シャマラン流”のアレンジを加えながら描いていく。
さらに本作はワクワクだけで押し通すのではなく、随所にニヤリとする場面やユーモアのある展開が描かれ、物語の緩急が巧みにコントロールされている。観客が父娘の会話にほのぼのとしていると、その隙を突くようにサプライズや意外な展開が差し込まれる。
映画『トラップ』はこれまでのシャマラン作品同様、最後の最後まで油断できない作品になっている。