たとえ1日に1カットも撮られない日があろうと、台詞が1行もない台本を渡されようと、どの出会いも無駄にしたくないなっていう想いだけは人一倍ありました。まあ、無駄にできない状況だったからですけど」
そして今、中村倫也という才能を多くの人が認めている。王子千晴は『光のヨスガ』という伝説のアニメを生み出すも次が続かず、8年もの間、表舞台から姿を消していた。光り輝く場所に立てば、今度は才能が消費される恐怖が生まれる。だが、その恐怖とは中村倫也はどうやら無縁のようだ。
「消費されることに対しては、特に何にも思っていないです。旬とか流行みたいなものは、そのうち過ぎ去るだろうなとは思ってたんで、別に怖くはないですし」
この達観とも客観とも言える姿勢。それは、流行が過ぎ去っても怖くないと思えるだけの、揺るぎない自信があるからなのだろうか。
「自信なんてひとつもないです。でも取り繕ったところで、自分は自分でしかないというか。明日、プロレスラーに喧嘩で勝てって言われても勝てないですし。その都度できることをやっていくしかない、って思っているから怖くないのかな。それより怖いのは、過去の自分と同じ表現をしちゃうこと。