将軍・渡辺謙とインカ王・宮沢氷魚が対決 5月15日よりPARCO劇場にて開幕の舞台『ピサロ』稽古場レポート&写真到着
副隊長デ・ソト(栗原)がそんな彼を励ますところに、ピサロの一喝が刺さる。渡辺の険しい眼光、雷鳴のような一声に稽古場中の息が止まった瞬間、長身のタケットが立ち上がって芝居を止め、一気に緊張が解かれた。穏やかに、丁寧に指示するタケットを、大鶴はしっかり見つめて何度もうなずく。囚われの身となったアタウアルパとして大階段の上に座っていた宮沢が、ふたりの近くまで降りて来て、そのやりとりを集中して聞いていたのが印象的だった。
続いては、ピサロが初めてアタウアルパと対話するシーンへ。黄金を与える代わりに自由の身を要求するアタウアルパと、デ・ソトの反対を押し切ってその取引に応じるピサロ。黄金よりも太陽の子アタウアルパに惹かれ始めているピサロの心の動きを、渡辺が鋭利な視線を放って豪気に、かつ俊敏に、多彩な表現で魅せていく。驚くのは宮沢が醸し出す、肝の据わった安定感だ。
初演の舞台で見せた神々しいほどの立ち姿、透明感ある毅然とした美に、さらに太い芯が備わったようだ。名優・渡辺謙と対峙するに引けを取らない強靭さが頼もしく、ピサロとアタウアルパ、両者の関係から浮かび上がる人間愛のより深い哀切を期待せずにはいられない。