森山直太朗、一〇〇本ツアーを振り返る独占インタビュー “この長いツアーで僕はようやく成人式を迎えられたんです”
もちろんそうです。それは自分が人格形成していくなかで得た自意識だったりコンプレックスだったりになるんですけど、そこが作品の根元になっていくんですよね。また母親の話になっちゃいますけど、十分な愛情を与えられてなかったっていうことにとってもコンプレックスがあったし、授業参観みたいなものだけに来る母親になんとも言えない憤りを感じていたし、それよりも毎日お弁当を作ってくれるおばあちゃんの方がリアルだったし。だけど……だから僕はこうやって音楽ができているし。自己肯定感が低い、というのが今、よく言われますよね。それって、信じられるものがないからだと思うんです。母の愛情の代わりになるものって信仰心だと思うんですけど、現代の日本ではなかなか持ちづらいものですよね。不確かな今と未来のなかで、それでも社会にコミットする生き方ばかりを求められる。
そうじゃないとはじき出されてしまう。何も持っていないことでどこにも居場所がなくなる。僕も同じような経験をしたから、そういう人たちの目線は感じられるんです。だからこそ言わせていただければ、人生ってもっと大きくて相対的なものなんですよ。母と僕の場合で言えば、親子の関係ではペケなんでしょうけど、そこに音楽を置けばマルになるんです。