結成10周年 弦楽合奏団「石田組」8300人の観客が熱狂した武道館公演レポート到着
三浦一馬(バンドネオン)との共演を通してタンゴ奏者としても高く評価されている石田であるが、ソロの語法やアンサンブルなど、ここではむしろクラシック奏者としての矜持を魅せる。熱気の満ちる場内に反して北野武映画のような淡く濃いブルーの照明がステージに差し込むと、石田の物哀しいソロに導かれて「ゴッド・ファーザー・メドレー」(ロータ)が始まった。文句なしの名演で、同時に石田のアウトローへの憧憬が垣間見えるひと時でもあった。
ここから本編ラストに向けて、どんどんテンションが高まる。「シーザー・パレス・ブルース」(U.K.)、「カシミール」(レッド・ツェッペリン)、そして「紫の炎」(ディープ・パープル)。演奏に呼応するかのように舞台演出も切れ味を増していく。そしてーーー「紫の炎」では至る所で火の手が上がるのであった。火を吹くクラシックコンサートを聴くのは、もちろん初めての経験である。
ただ、燃え盛るステージで演奏された本作はヴィヴァルディの協奏曲のような様式美を聴かせ、それはともすればロックとクラシックを融合させようとした作曲者のリッチー・ブラックモアが企図したものと近かったかもしれない。オープニングと同様、呆気にとられながら本編は終了した。