ご養育掛りとして、浩宮さま(現在、天皇陛下)と向き合った10年の記録。遂に文庫化『浩宮さま』12/4発売
浩宮さまが他の子どもたちと同じように幼稚園や学習院初等科に通学される前から、「自分のことは自分でする」ことができるようにと、浜尾氏が厳しくも温かく接していた様子が本書の端々から伝わってきます。
■「ボクにはどうして名前がないの?」というご質問
民間の幼稚園で他の子どもたちと同じように生活していただくなかでの、特別なお立場ゆえのエピソードを、浩宮さまに「オーちゃん」と呼ばれていた浜尾氏はいくつも紹介しています。たとえば、ある日、浩宮さまに「オーちゃん、ボクにはどうして名前がないの?」と尋ねられて、浜尾氏は困ってしまったと回顧しています。幼稚園では他の子どもたちが「太郎ちゃん」「花子ちゃん」と呼ばれる一方、浩宮さまは「宮ちゃま」と呼ばれるため、「名前がない」とお感じになるのは当然で、それでもこの疑問に対し「ナルヒトちゃん」とお呼びするわけにもいかなかったからです。また浜尾氏のお子さんたちが浩宮さまと同じ幼稚園に通っており、さらに御所の中の官舎に住んでいたため、「おしのびで遊びにみえることもあった」と述懐しています。突然自転車で浜尾家においでになることもあり、はじめて居間のコタツでトランプ遊びをなさったというような微笑ましいエピソードも述べられています。