BS松竹東急にて「渥美清特集」放送!監督・山田洋次&倍賞千恵子が当時を懐かしむコメント【『男はつらいよ』55周年記念】
このような多様な作品を経て、渥美さんは『寅さん』シリーズ一本に仕事を絞ることになるのです。
【倍賞千恵子さんコメント】
こちらがセリフをポンと投げると、渥美さんがポンと投げ返す。テンポよくセリフのキャッチボールを重ねて、どんどんテンションが上がっていく。歯車がぴったり噛みあった、即興演奏のかけあいのように、お芝居がどんどん進むと、あまりにもうまくいくことが、たまらなくおかしくなって、ある瞬間、爆発する様に、同時に吹き出してしまう。相性がよかったのか、間合いが合うのか、渥美さんとのお芝居では、そんな幸せな時間を何度も過ごしました。二人でお芝居をしたときにだけ体験した、特別な瞬間です。
そして、渥美さんは、常に相手の立場に立って物を考えている方でしたから、普段の姿から「人の立場になって物事を考えることの大切さ」を学びましたし、何よりも「人間としてどう生きるか」「人はどうして生きていくのか」ということを教えてくれました。映画『男はつらいよ』シリーズは、「玉手箱」みたいな作品なのではないかしら、と思います。
そこには、日本人の情や、今は失われてしまった風景など、たくさんの「宝物」が詰まっていて、観る度に、人として大切なことを思い出させてくれる気がします。