家康の青春時代に焦点をあてた異色作 書き下ろし歴史小説『若武者 徳川家康』を発売
を見出しました。固定したイメージと異なる家康を描きたいという思いは、本作の序章で、徳川家お抱えの豪商である茶屋四郎次郎清延に語らせた「戦国の武将としては異色のお人、とわしは思う」という言葉にも表れています。
天下取り以前「伊賀越え」までを描く
9歳の松平竹千代は、14歳で元服して元信を名乗り、16歳で妻を娶って元康と名を改めます。「旅立ち」の章は、17歳の初陣で勝利を飾るも人質のままだった元康が、織田信長の急襲によって義元が討たれた混乱に乗じて、岡崎に入城するまでが描かれます。再会した信長の人物の大きさに圧倒されたり、下手な戦に嘆息すれば家臣に叱咤激励されたりするなど、本作の家康は、等身大の若武者そのもの。家康41歳の「伊賀越え」の章まで、危機と好機に翻弄されながらも、戦国の世を終わらせる礎を築き、天下を目指す成長物語となっています。新作大河ドラマの予習もできる1冊です。
ふと、青春、という言葉を思い出した。
いつか文書の中で出合うた憶えがある。清新で暖かみのある言葉だったから記憶に残っていた。おれにも、青春、はあったはずだ、と家康は思う。だが、あっという間にそれは過ぎ去ってしまったようだな。