家康の青春時代に焦点をあてた異色作 書き下ろし歴史小説『若武者 徳川家康』を発売
(「七章信康の死」より)
さて、これからどうするか。家康は穏やかな伊勢湾の海面に目を遊ばせながら、己に呟いた。
信長様はお優しい心をお持ちだった、とふと思う。家康が人質として尾張にいた頃のことが思い出される。(中略)長い人質時代を苦しんで来た家康にとって、なにより大事なことは自立独立である。信長はそれを慮ってくれたのではないのか。そして、それが信長の優しさだった。
とまれ、その信長の唐突な死によって、一つの時代が終りを告げた。
その結果、天下が大きく動いて行くことになる。
(「九章伊賀越え」より)
『若武者徳川家康』について
【著者】
嶋津義忠(しまづよしただ)
1936年、大阪生まれ。59年、京都大学文学部卒業。産経新聞入社。化学会社代表取締役社長を経て、作家に。主な著書に、『わが魂、売り申さず』『乱世光芒 小説・石田三成』『幸村 家康を震撼させた男』『上杉鷹山』『明智光秀』『竹中半兵衛と黒田官兵衛』『小説 松平三代記』『柳生三代記』『上杉三代記』『楠木正成と足利尊氏』『信之と幸村』『賤ヶ岳七本槍』『平家武人伝』『「柔道の神様」とよばれた男』『北条義時』(以上、PHP研究所)