全盲になり「音」に気づき、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で気づいた粋なBGM演出 『目の見えない精神科医が、見えなくなって分かったこと』
ちなみにタイムトラベル映画の金字塔『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、同じ時代に戻って来た時は同じBGMを流すという小粋な演出をしてくれています。おかげで年号表記や街並みの映像が見えない私でも、今旅している時代を自然に認識することができます。
さらに、音に集中するから楽しめるようになった世界があります。例えば、イヤホンで聞いている音楽と、街で聞こえる音の不思議なセッション。「ここで車のクラクションが入るか、最高!」「隣の人の足音とドラムのリズムのシンクロがバッチリ!」そんなふうに散歩を楽しむことがよくあります。
生活音同士のセッションもまた素敵で、工事現場の「コツン、コツン」と杭を打ち込むような音と、自分の鼓動がぴたっと一致した時には、なんだか良いことが起こりそうな予感がします。
踏切の「カーンカーン」という音は、空白のほうを先に捉えて「ンカー、ンカー」と頭の中で裏打ちに変換すると、同じ場所でも楽曲の別バージョンのような味わいがあります。
隣の犬の吠える声。
雨粒が屋根に跳ねる音。
遠くのクラクション。
誰かの足音。
自分の鼓動。
そして地球が回る音。
なんとも華やかな交響楽団です。