『海に眠るダイヤモンド』端島炭鉱の実態は? 監修・黒沢永紀氏が解説
特に切羽(きりは)と呼ばれる最前線で石炭を採掘する採炭員や坑道を掘り進む掘進員は、確実に粉塵を吸い込んでしまうので…」。予期せぬ事故はもちろんのこと、長きにわたり坑内で働くことで作業中に粉塵を吸入し、「珪肺(けいはい)」という病を患う可能性もあったのだ。第1話で咳き込んでいた鉄平主人公の父・一平(國村隼)も長きにわたり炭鉱で働いているため、肺が限界を迎え週に3日しか働けなくなっている。
炭鉱での仕事は専門職。ジョブローテーションのようなシステムはなく、基本的に一度就いた担当から変わることはなかったという。そして、同じ炭鉱員でも坑外で働くほうが肺の病を患う可能性は低かったのだが、最前で働く炭鉱員はみんな自ら希望するのが基本だったそう。「採炭の仕事は一番給料がいいけれど、それは命を危険に晒す作業を覚悟の上での仕事でもありました」と、黒沢氏は思いを巡らせる。
原料がダイヤと同じ炭素であることから“黒いダイヤモンド”といわれた石炭。
当時、端島が産出する石炭の単価は国内で一番高く、それ故に端島の人々は豊かな生活を送ることができたのだ。
黒沢氏は、福岡・筑豊の炭鉱で働き、その様子を記録に残した山本作兵衛についても言及。