しかし、私たちはトーべさんに対するオマージュとしてこの映画を作りたかったし、彼女の線の美しさを活かしたかったので、手描きアニメにしたのです」。
製作陣のこだわりは脚本作りにも反映されている。「私たちはオリジナルに立ち戻りつつ、エンターテインメントとしてしっかりと楽しめる映画を作りたいと思いました。この映画はトーべさんの書籍のエピソードを原作にしていますが、そのまま映画化してしまうと15分か20分にしかなりません。ですから、彼女が描いた他のエピソードやスタイルを借りながら話を膨らませて、動きや音楽や色彩を駆使して映画作りを進めていきました。このドラマは1950年代にトーべさんがお母様とリビエラに旅に出た際の思い出や想いが反映されたものです。ですから、彼女の体験をムーミンに置き換えて綴った物語でもあるのです」。
手間のかかる手描きアニメを採用し、白黒のコミックに色彩を追加し、原作を繰り返し読み込んで脚本作りがされた本作は、監督の語る通り、トーべ・ヤンソンが描こうとしたムーミンの世界そのままだ。
アニメシリーズやグッズでムーミンに親しんできた日本の観客は、どこか懐かしく、同時に新鮮な想いを抱くだろう。