身体表現と映像とが一体となって展開。吹越満が仕掛けるスリリングな舞台
ルパージュの舞台は“フィジカルシアター”(身体と言語が融合した作品)と呼ばれ、芝居と強い身体的表現、さらに映像での効果を取り入れたアーティスティックな構成が特徴。美学に貫かれた世界観を構築するため、キャストは高い身体能力と共に、全編にわたって常とは異なる緊張感を強いられる。自らが演出と主演を兼ねる<ソロアクト>シリーズで同じく身体表現を追求してきた吹越だが、今回はルパージュという他者の演出作法をベースに、オリジナルの文脈で咀嚼した吹越版『ポリグラフ』を展開してみせる。
本作は吹越いわく「我々3人の“ポリグラフズ”というユニットが演じている」体裁をとっているとか。キャストはしばしば舞台端のパーテーションの影にたたずむところを客席から目撃され、過去の殺人事件が明らかになってゆくステージ中央では、ルーシーとフランソワ、デイヴィッドの記憶がフラッシュバックのように挿入される。スローモションさながらにゆっくりと倒れ込むルーシー、クラブで激しくトリップするフランソワ、過去のとある記憶に何度も戻ってゆくデイヴィド。観る者は3人の現在と過去、そして“ポリグラフズ”が演じる今を行き来しながら、次第に誰かの夢に入り込んでゆくような心地よさに襲われる。