松居の苦悩はゴジゲンの看板役者・目次立樹も感じていた。「10年くらいの付き合いなのに、休止寸前の頃は全然話しかけられない空気だった」。目次が役者業から離れたのをきっかけに、しばらく活動を行っていなかったゴジゲン。「今回のキャストにも入っている堀善雄と、ある日飲んだ勢いで目次に電話したんです。そしたらこいつ、岩松了さんの戯曲を読んでいた。『またやろうぜ』って言ったら『やるか』と返ってきました」。そのひと言が松居の背中を押した。「酔っぱらっていたから軽いノリでOKしたら、翌日にはもう劇場がおさえられていたんです」と目次は笑いつつも「正直、ゴジゲンの作品だけはやり続けたいという思いはありました」と語る。
稽古場ではちょっとした休憩の後、再び6人が輪になって雑談を始めた。しかし気づけば同じ会話を何度も繰り返している。……雑談ではない、作品の稽古に入ったのだ。松居と親交の深いキャストがそれぞれ、ゴジゲン休止の3年間をどうやって過ごしていたのかを互いに報告しあう。その内容がだんだん具現化されてゆく。エピソードを体験した役者自身が演出もしている様子だ。これはゴジゲンにとって初めての試み。松居は基本的には口を出さず、役者が迷ったときにポツリとアドバイスする。