主役の元孤児の裁判官役を熱演して公演を成功に導いたカレーラスに、世界中から押し寄せたファンがスタンディング・オベーションで大きな拍手を贈り、スター・テノールのオペラ復帰を祝福した。8月にチロル州のエルル祝祭劇場での同作オーストリア初演にも出演したカレーラスだが、これがキャリア最後のオペラとなるのか、はたまたこれを機にオペラ活動が再燃するのか、今後が注目される。
カレーラスのオペラ出演に関しては、2009年に英『タイムズ』紙がオペラ引退宣言を報道し、カレーラス側がすぐに否定するというちょっとした「事件」があった。しかしカレーラスのオペラ出演は2002年ワシントン・オペラの来日公演《スライ》(ヴォルフ=フェラーリ作曲)が最後だったから、ファンの多くは暗黙の了解として実質的なオペラ引退を覚悟していたはずだ。それだけに今回のオペラ復帰は驚きだった。
ほぼ毎年来日して、独特の愁いを帯びた情熱の歌声を聴かせてくれるカレーラス。今年も11月29日(土)に東京・サントリーホールで「郷愁」と題するリサイタルを行なう(共演:ロレンツォ・バヴァーイ[ピアノ])。リサイタル翌週の12月5日(金)が68歳のバースデイ。