主役のヴィオレッタはソプラノ歌手にとって難役だ。第一幕では華やかな高音のアリアがあり、第二幕、第三幕と進むにつれ劇的な性格描写が必要な役柄なので、幅広い、しかも異なるタイプの声の表現が求められる。ほぼ出ずっぱりで休む間もないからなおさらだ。今回ヴィオレッタを演じるのはスロヴェニア人ソプラノのベルナルダ・ボブロ。凛とした透明な美声を持つ彼女の名前を一躍有名にしたのが2012年に英国ロイヤル・オペラで急遽代役で歌った《椿姫》だった。出世役を引っさげての新国立劇場初登場に期待が高まる。
ヴィオレッタの恋人アルフレードを歌うのは、注目のイタリア人若手テノール、アントニオ・ポーリ。スカラ座の2013年来日公演《ファルスタッフ》フェントン役やローマ歌劇場の2014年来日公演《ナブッコ》イズマエーレ役で聴かせた甘くのびやかな歌声も記憶に新しい。
「新しい酒は新しい革袋に盛れ」の故事もある。オペラ界の次代を担う旬の顔ぶれが揃った新制作《椿姫》が魅力的だ。
文:宮本明
◆新国立劇場オペラ「椿姫」〈新制作〉
2015年5月10日(日) 14:00開演
2015年5月13日(水) 14:00開演
2015年5月16日(土)