国や政治に翻弄され、離散していく劇中の家族に、韓国で今まさに問題となっている家族の崩壊という社会現象を重ねて観てくれたんです。
『パーマ屋~』は執筆時に苦労しました。戯曲の残り3分の1くらいのところでピタリと筆が止まって。悲劇的な展開とラストを書くことに、心のどこかで迷いや抵抗があったんだと思います。でも当時の、激しい時代の流れを描くためには、なんらかの犠牲がどうしても必要だと腹をくくった。結果、別離や旅立ちを希望として表現することが多い僕の作品には珍しく、“留まる決断”を下すヒロインが生まれたんです」とも。
『焼肉~』『たとえば~』はほぼ全キャストが刷新。続く『パーマ屋~』も一部の俳優が変わり、単なる再演ではない進化が見込まれる。
「俳優が変われば、必ずそこに新たな化学反応が生まれる。演劇は人と人との関係性、その繋がりから生まれるものですから。だから演出家の僕が新しくするというより、作品が勝手に新しくなっていく、その作用に身を委ねていこうかなと、今は考えています。特に一番手の『焼肉~』は、韓国人キャストも含め、初めてご一緒する方も多いので、何が起こるか興味津々です。」という鄭の言葉を信じ、生きようと足掻き、生命を燃やす登場人物たちとの再会に期待したい。