佐藤アツヒロが4度目の“捨て男”に『オカンの嫁入り』
正司が荘田の食事を気にかけるなど役柄同様のやり取りが行われ、キャスト達が作品に馴染んでいるのが伝わってきた。また、稽古の合間には関西弁のチェックも。キャスト達は方言指導の先生に何度もイントネーションを確認し、役作りに取り組む。
本作には、自分の親切がもとで起きた事件がトラウマで外出恐怖症になった月子の苦しみや、祖父が自分の友人に騙され責任を感じ続けている研二の葛藤、さらに認知症やガンという病気、たったひとりの家族の死など、現代を生きる私たちのすぐそばにある出来事が数多く描かれている。その出来事を「不幸」として描くのではなく、周りの人たちの温もりの中でゆっくりと前を向いて歩き出すまでの姿を丁寧にみせていた。登場人物たちはいつも誰かのことを想っていて、それがなかなか伝わらなくても諦めない。人に当たったりしながらも相手と向き合う姿は、人と人とのつながりや会話をすること、待つことや時間をかけることの大切さなどを思い出させる。それを押しつけがましくなく感じられたのは、キャスト達から生まれる温かな空気もひとつの理由のように感じた。
1月20日(金)に埼玉・志木市民会館パルシティでプレビュー公演。