演目をご紹介しておくと……まず、心たかぶる迫力にオーケストラの凄味をみせつけられるシベリウスの交響詩《フィンランディア》から。続いて同じくシベリウスの〈ヴァイオリン協奏曲〉でも、ひんやりと冴えた北欧の幻想美がひろがり……その抒情豊かな歌にも、色あいが細やかで美しい。ヴァイオリン独奏とオーケストラの対話が情熱とともに昂揚してゆく、そのぞくぞくするような緊張感もまた魅力だ。独奏に迎えるのは、フランス国立放送フィルのコンサートマスターをつとめる俊英スヴェトリン・ルセフ。首都圏の凄腕たちが集う特別オーケストラとも心通じ合うに違いないゲストだ。そして最後はストラヴィンスキーのバレエ組曲《火の鳥》。ロシアの民話を題材につくられた魔法と冒険のバレエのために、カラフルな表現力を全開にする音楽だ。そこからコンサート用に美味しいところをぎゅっと編み直した組曲(1919年版)も、なにしろスケール感が凄い。
震えるような繊細な弱音から魔王の凶暴なダンスに轟くインパクト、聴く者の心を解放するような壮大きわまるフィナーレまで…そのなかにも万華鏡のような色彩感を味わいつくせる、まさに傑作。オーケストラにはそれぞれ異なる個性的な音色を持った、さまざまな種類の楽器が集まっている。