ルーマニアの鬼才が佐々木蔵之介ら日本人キャストを初演出
「読み合わせというものを始める前に、まずリラックスしてください。ゆっくりと仕事を始め、ゆっくりと世界に入っていくのが私のやり方。まず知り合いましょう。俳優と会話をしていろいろ見つけながら作っていきたいのです。頭の中にいくつかある方向性という名の扉を皆さんと開けて、その方向に一緒に進んでいきたい」
主演・佐々木らキャスト陣は、引き込まれるように耳を傾ける。「面白そうなことが始まるぞ!」という、実力派ベテラン俳優たちの心の声が聞こえてきそうだ。
「1年前ぐらいに行ったオーディションのときに、ほぼオールメールというのを決めました。最初から物事をクリアにしないという私の方針上、完全なオールメールにはしないことに。
これで、道筋がいっそう混乱を極めることになったと思います」
笑みを交えず淡々と、だがほのかにユーモア漂う語り口のプルカレーテ。稽古場には既に、ルーマニアから運んできたというセットがいくつか置かれていた。コンテナ?浴槽?なんとも断言できない装置ばかりで、いずれもずいぶん錆びている。
演出家自身もまだ道筋が見えぬクリエイションに乗り出すカンパニー。だがそれはかつてなく刺激的な旅で、結果生まれる作品もきっと、かつてない衝撃を観客にもたらすだろう。