自然を謳歌し、鳥が鳴き、天上の喜びといった楽章の中に、絶望的な4楽章が存在します。マーラーはこの先の時代に人類皆が肉体的にも精神的にも疲弊していくことを予言していたのではないでしょうか」
大野の考えるこの作品の聴きどころとは。
「第1楽章から第2楽章への橋渡しが重要と考えています。第2楽章が上手くいけば、この交響曲は上手くいくんですよ。演奏者もお客様も皆集中し、30分かけて第1楽章が終わります。続く第2楽章最初の和音をどう想像して入っていくのか、そこが非常に難しい。作曲当初、マーラーは各楽章に『花々が私に語ること』『森の動物たちが私に語ること』などの標題を与えていました。お客様にはこれから『私たちの時代が語ること』という章を作るような気持ちで聴いていただくことが、この交響曲の予言に応える意味で大事だと思います」
東京都交響楽団≪マーラー(交響曲第3番ニ短調)≫は4月9日(月)東京文化会館 大ホール、4月10日(火)サントリーホール大ホールにて。