過去の演奏経験によって作品を照らす光は違って見える。だからこそ、作品の背景や前後関係にはいつも気を配っています」
新シーズンは、さらにこのあとも意欲的なプログラムが並ぶ。まず5月は、飯森範親によるウド・ツィンマーマン(1943~)の歌劇《白いバラ》日本初演(演奏会形式)。1943年、反ナチ運動で逮捕・処刑されたミュンヘンの学生、ハンスとゾフィーのショル兄妹の物語だ。彼らが所属した非暴力レジスタンス・グループの名前が「白いバラ」だった。作品は1967年に作曲されたのち、1985年に台本も差し替えて全面改稿された。この第2稿は1986年のハンブルク州立歌劇場での初演以来、すでに100以上の異なる演出で上演されている20世紀オペラの成功作。待望の日本初演が実現する。
6月のシューマンの未完成交響曲《ツヴィッカウ》を挟んで、7月には再びノットが登場してエルガーの《ゲロンティアスの夢》を振る。合唱王国イギリスを代表する宗教オラトリオだが、日本での演奏はこれでまだ6度目。東響としては13年ぶりの演奏となる。イギリス人ながら、「これまでイギリス音楽はあまり演奏していない。身近すぎるのかも」というノット。