そこへ、敵なのか友なのか、ある男(王下貴司)との関係が絡み合っていく。
今回の身体表現はごくシンプルだ。派手なダンスもアクションもない。楽器の音質を生かしたどこかノスタルジックな音楽。鍛えこまれたパフォーマーだからこそ可能な計算された照明。見る席で印象を変える斜めを多用した舞台美術。小劇場ならではの繊細な表情とそれを見る観客の視線。小野寺はさまざまなイメージを揺らしよじれさせ紡いでいく。
ストーリーは明確には示されない。しかし、小野寺が用意したディテールを集め、謎を追うようにパーツを組み立てているうちに、勝手に物語を創り上げていた。そして、予期せぬ感情が生まれていた。この感情を作品のどこに忍び込ませるかで、全体の受け止め方も大きく変わっていきそうだ。
普通に見えた男の旅はどうなるのか?今の我々とどうつながるのか?イメージの連鎖を楽しんでいると、小野寺はぱっとそのイメージをも翻す。夢か現実か戸惑う観客に、小野寺はほくそえみ、期待を込めた視線を向けてくる。「やられた!」と思ったときには斜面の上にたたずみ、客席の自分を見つめているような感覚となった。初日を終えた小野寺は「間について、もっともっと味方につけていきたい」