だと言い切った。「ラフマニノフというとピアノ曲やオーケストラ曲のイメージが強いかもしれませんが、僕は歌の作曲家だと思っています。歌曲も多い。そしてチェロは歌ってなんぼの楽器です。歌わなければ意味がない。チェロで弾くのにふさわしい作曲家です」
実際、ラフマニノフにはチェロのためのオリジナル作品はわずかしかないため、今回も歌曲の編曲版を多く弾くことになるのだが、「オーケストラ曲を聴いていてもラフマニノフがチェロ好きだったのは明らか。歌曲をチェロで弾くことにも、大いに意味があると思います」
代表作であるピアノ協奏曲第2番に象徴される、ラフマニノフの甘く美しいロマンティックな作風を、「まるで映画音楽」と揶揄する向きもあるが、伊藤は、「そういう方々のために、今回のプログラムなんです!」と胸を張る。10代から20代前半で書いたごく初期の作品から、あまり聴かれていない中期から後期の作品までが並ぶ、クロノロジカルに作曲家の全貌を見渡す構成。
「だんだん内容が深まってゆき、時代によって全然タイプの異なる曲を生んだラフマノニフの作風の変遷を、ぜひ聴いていただきたいと思います」
ロンドンでは公演時間の事情で入れられなかった曲(歌曲〈夢〉作品38-5)