黄金期を更新しつづけるパッパーノ 当たり役を得て大作『オテロ』を上演
それ以上に驚かされたのは、9時半くらいからオーケストラのメンバーが上野の東京文化会館に集まり、リハーサルの準備をしていたことだった。ロンドンの人々の朝はかくも早いのか。そのパワーの源泉となっているのはつねに勤勉で健康体なパッパーノであることは明らかだった。
イタリア人の両親のもと英国に生まれたパッパーノはコレペティ出身で、声楽教師であった父親のアシスタントとして10代から歌手たちのレッスンの伴奏をしていた。1987年のノルウェー歌劇場での『ラ・ボエーム』で指揮者デビューを飾る。パッパーノが音楽監督を務めるサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の来日公演では、壮麗な『アルプス交響曲』(R・シュトラウス)が印象的だったが、パッパーノはオペラ以外のシンフォニーでもスケールの大きな演奏を聴かせる。歌、演技、音楽と総合的なアプローチが可能なのは、彼自身がストイックな努力家であり、音楽に関して幾重もの洞察を重ねてきたからだろう。英国ロイヤル・オペラがいつもフレッシュで革新的である理由はそこにあるのかも知れない。
キース・ウォーナーの演出はオテロを陥れる家臣ヤーゴの闇の精神に迫り、潜在的な「悪」