ロボットが教えてくれる温もり――劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』好評上演中
旅の中で様々な人や出来事と遭遇し、自分の人生に背を向けていたベンは少しずつ再生していく。ベンを演じる田邊真也は、四季の看板俳優のひとり。もともと芝居力の高い人だが、傷を抱えながらも心優しい青年という役どころを力みなく演じていて、魅力的だ。四季の地力が発揮されるダンスシーンなどの華やかさと、丁寧に紡がれていく登場人物たちの感情の繊細さが見事に融合し、質の高いオリジナルミュージカルが誕生した。
そして何といっても秀逸なのは、ロボットのタングだ。大きな四角い頭、まんまるレンズの目、無骨な鉛色の3頭身くらいの身体……まずビジュアルが最高に可愛らしい。その上、時に癇癪を起こすし、暴走もする、何ならちょっと拗ねたりもする、なんとも人間臭いところもいい。照明の光が反射しキラキラ輝くその目には、時折涙すら見えるような気すらしてくる。
パペットデザイン&ディレクションは『リトルマーメイド』も手掛けたトビー・オリエ。俳優2名が息を合わせ操るさまも見事で、ちょっとした動作ひとつとっても感心しきり。それにしても、心のないはずのロボットにここまで感情移入をしてしまうのはなぜなのだろう。無機物に心があるように感じるのは、観る側の勝手な妄想か。