小劇場ミュージカルの雄『SMOKE』、四演目も熱く開幕
兄貴分的な役柄を、大きな存在感と静かな迫力で演じる。しかし時折、押し殺した怒りや悲しみが背中から立ち上るような切なさを体現し、さすがのひと言。〈紅〉の池田もまた初演からのキャスト。謎めいた女性である〈紅〉だが、今年の池田〈紅〉は“恋しい”という感情を全面に押し出し、また新たな造形だ。キャリアのある大山と池田は、ジェットコースターのように上下する感情を息をするように自然に、しかも魅力的に見せていく。しかし、ののしりあっていても、その息の合いっぷりからどこか共犯者めいた空気が出てくるのも面白い。一方、27歳だが精神は14歳で止まっている青年〈海〉は、初参加の内海。少年性の強い〈海〉でピュアさや戸惑いをフレッシュに演じるが、後半、彼が覚醒してからの冷たさも印象に残り、面白かった。
今まで浅草九劇では四方を客席で囲ったセンターステージで上演、観客の眼前に俳優がいる緊密さ、迫力も人気のひとつだったが、今回はコロナ禍バージョンで三方が客席、ステージはスクリーンとビニールシートで囲まれた。しかしスクリーンの使い方の面白さや、“囲まれた”ことを利用しステージを煙で満たしたりと、現状を逆手にとった演出の巧みさも光る。